新築の設計と改修設計の一番の大きな違いは、新築では更地に建物を設計しますが、改修設計の場合、建物が既に存在し、建物によって固有の経年劣化の症状がでてきます。そうした部分を考慮に入れる事で、単に建物を新築当初の状態に戻すだけでなく、傷みやすい部位や特有の故障が生じている部分には、新築当初の設計仕様よりも高いレベルを設定することにより、建物全体の耐久性を高め、建物全体の価値を向上させることを目指します。

1.建物診断から改修設計について
1)徹底した建物の現況把握を行います。

大規模修繕工事後に、同様の故障が短期間に再発しないよう、また、改修後に問題を残さないようにするために、徹底した現状把握(建物診断)を行い、故障の発生原因を深く究明します。

2)経済性を考慮した設計を行います。

建物の維持管理に関する主治医として、管理組合の立場にたち、無駄な工事を行わず、修繕費が有効に生きたお金として使われるよう、「安かろう、悪かろう」の工事とならないよう技術力を発揮します。

たとえば下記のように劣化の進行しやすい部位と、比較的進行のしにくい部位の仕様グレードを替え、建物全体としてトータルコストを下げる決定を行います。

3)次の大規模修繕工事をにらんだ改修設計を行います。

次の大規模修繕工事に、今回実施する工事仕様が負担とならないような設計を心掛けます。

例えば、次期工事の際に、今回の防水工事や外装等施工した部分を剥離したり、撤去したりする必要が出来るだけ発生しないよう心掛けます。

2.設計管理について
1)建物の現状および補修方法を徹底します。

調査時に作成したスライドの説明や施工手順のわかる指示書を作成し、作業員の詰所に掲示するなどして、直接施工をする職人まで設計意図が伝わるようにしています。

2)工区割を行います。

施工範囲が広範囲に及ぶと施工者の管理もずさんになり易く、手戻り作業が多くなり、品質の低下を招くことにもなりかねません。当事務所の工事管理では、工区割りを細かくすることで、集中した監理を行います。また、施工者は各工区において、各工程毎に検査をとおらなければ次の工区に進めないため、結果的には満足の行く品質が確保されることになります。また、工区割りを行うことは、居住者への工事の影響を最小限にする効果もあります。

3)材料管理を行います。

当然のことながら、適切な工事品質は適切な施工手順と適切な材料使用によって得られます。当事務所では、材料の搬入時の確認、使用後の空缶の確認をすることで、所定の使えr7用量が使われているかを確認します。また、混合して使用する材料の場合は、計量器を用いて厳密に配合することを施工者へ義務付けています。塗装材の場合は、上塗り、中塗りの色を違えることでぢ所定の塗り回数が得られているかも確認します。

4)追加工事を防ぎます。

足場仮設後直ちに、故障量の集計を行い、工事予算との調整を図ります。

5)週間定例会議、総合定例会議を主催します。

工事施工に際しましては、性能・工法・工期・安全などについて、建物診断内容の説明会、仕様書説明会、テスト施工実績などにより、施工者と入念な打合せを行い指導します。

具体的には、週一度の定例会議(管理者・施工者)を主催し、その中で施工者からその週の問題点、監理指摘事項の処理状況と自習の予定を聴取し、発生あるいは予想される各種問題についてその解決策を指示します。また、月に一回、工事の心象を含めた総合定期会議(管理組合、管理者、施工者)を開くとともにその結果をご報告します。

6)居住者の生活を極力優先します。

物品の移動を含め、バルコニー周りの工事での影響が極力少なくなるよう配慮します。また、施工者に分かり易い工程表を作成・掲示させ、居住者の方が、いつ、どこで、どのような工事が行われているのかがわかるようにします。

7)工事会社の施工体制を確認します。

工事会社の施工体制(下請会社)を事前に確認することで、工事形態が重層構造になることを防ぎます。

8)安全管理を行います。

施工時器により、予想される安全面での対策を怠らないように施工者に指示します。また、施工に適さない日には施工させないよう心掛けます。

9)アフターケアへの準備を行います。

瑕疵保証が具体的に履行されるよう指示書、日報の記録を保管し、管理報告書を提出します。

10)施工会社と協力して、よりよい施工が行われるよう勤めます。